危機が迫る韓国のキムチ文化とキムジャン風習。巻き返しは如何に。
2016/03/22
目次
キムチは文化
韓国の方にとってキムチは国民食だと言われています。まぁ言うまでもないですよね。
ですが、我々日本人にとっても、キムチなら韓国!韓国といえばキムチ!というイメージが湧くほどに、キムチは我々日本人にとってはよく知られ、親しまれながら食べられている食品と言えるのではないでしょうか。キムチ鍋にキムチチゲ、キムチとチーズのピザ、お酒のあてにそのままでも…。うーん、よだれがたれそう(笑)キムチはとっても美味しいです。
そんなキムチですが、5月17日現在、韓国のキムチ貿易赤字が進行しているのだそうです。
実は、この流れはかなり前、2006年頃からあったんですが、最近の日本の円安の影響で輸出の伸び悩み、中国産キムチの流入など、韓国国内のキムチ事業は一層苦しい状況が続いているみたいですね。
ちなみに昨年の韓国のキムチの輸出先は63カ国。そのうち日本は67%もの量を占めています。※キムチ個人的にかなり好きなんですけどね。私だけで日本のキムチ消費量にかなり貢献している気がする(笑)
このように多くの諸問題により韓国産キムチのこれからが危惧されています。
しかし、韓国のキムチはとても美味しいですし、キムチを漬け、食べるのは文化でもあります。※タイトルにあるキムジャンとは、キムチを漬けるという行為から由来するみたいです。後にも説明したいと思います!
今回は韓国のキムチ文化と、韓国キムチの危機について考えてみたいと思います。
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キムチは多種多様、韓国の高校生に聞く
そんなキムチは種類も味も様々で、地方、あるいは家庭ごとに作られるキムチ、好んで食べられるキムチにも違いがあるのだそう。
実は私、過去に文化交流の活動をしていた際、韓国の高校生と部活動を通しての文化交流と、ホームステイをさせていただいたことがあるんです。
その際にも、家庭によって食卓にならぶキムチの種類や味が違うことを実際に認識しました。
韓国の高校生が言うには、「日本のキムチも美味しいけど、やっぱり韓国のキムチとはちょっと違う」とのこと。皆言いましたね。
私も韓国でキムチを色々な場面で食べましたが、本当に全然違いましたよ。お家、お店で様々。※私個人としては酸っぱめより、辛くて旨味のあるやつが好きです。
やはり、味の好みにもお国柄があるのでしょうかね。それらお国柄の違いもキムチの味の多様性を生み出す原因だと考えられます。
韓国の高校生との交流を通じ、私の韓国のキムチはただ辛いものという、これまで私の認識は、この時改められたのです。辛味だけではない、そこには酸味、塩気、旨味の度合い、味の種類にも明確な違いがあったのです。
キムチを漬けるという文化の起源
場所、家庭によって味も種類も様々なキムチですが、韓国の人々にとってキムチ作りは、とても大事な文化であるという認識はきっと変わらないはずだと私は考えます。てことで、キムチを作る経緯を調べました。ザックリと言えば以下の通り↓
韓国の冬は寒くて長い。昔から、秋の収穫が終わると長い冬越しの準備に忙しくなるのでした。
この時、冬の間にハクサイなどの蔬菜類をどう貯蔵するかかつ旨味を保全するのかという課題が起こりました。この課題を解決したのが、キムチを漬ける文化であるキムジャン風習・およびキムジャンの文化というわけなんですね。
韓国では11月から翌2月までの野菜を貯える方法としてキムチを誕生させたのです。
毎年晩秋になると身内がたくさん集まってきて、それはそれは仲睦まじくキムチを漬けてきました。キムジャンの風習は長い年月を経ながらも確かに残り、伝えられてきた民族伝来の風習だったんですね。
古代の記録によれば、李朝初期といわれる、太祖7年(1398)にまでさかのぼるのだそうですよ。
中国産キムチの流入
しかし、記事冒頭でも挙げました通り、韓国のキムチ文化、キムジャン風習が薄れてきている事案が発生しています。キムチの輸入が輸出を上回り、「キムチ危機」が起きています。韓国で食べられるキムチはすべて国産かと思いきや、最近では輸入キムチ、特に中国産キムチが増えています。
「地元レストランから韓国産キムチが消えていくのは残念なこと」とコメントするのは韓国農産物流通公社のオフィサー。高めのレストランを除けば、出されるキムチは実は中国からというケースが多いみたいですね。
これは生産コストに原因があると言えそうです。
韓国産のものは1キロあたりの卸売価格が3000ウォン(2013年11月のレートで約286円)、対して中国産はたった800ウォン!(これまた前述のレートで約76円)。※価格差すっごいです…。安いのはもちろん魅力ではありますけど、こりゃ大したものですよね。
そして、この価格差が2006年より起きている韓国の「キムチ赤字」の主要原因となっているわけです。
さらに中国産キムチを出すお店では、その安全性が懸念されるためか、キムチの原産国を偽って提供している店もあるとの噂も。
でもきっと、これだけ中国産キムチの流入が続いているわけですから、韓国の方も中国産キムチと気づいているんじゃないかなとは思うんですけどね。
各家庭でキムチを漬けなくなった
さらに本来、11月にはキムジャン風習で盛り上がるはずなのですが、最近ではそもそも漬けなくなってしまったのです。
これは社会の現代化で家族や地域社会との結びつきが弱まっていることに由来します。しかも特に若い世代にこの習慣の薄まりがみられるわけで、キムチを漬けるという文化の継承さえも危ぶまれているんですね。どうしたものか。
ユネスコの無形文化遺産で巻き返しなるか!
しかーし。
そんな韓国のキムチ、キムジャン風習に良いニュースが2013年12月5日に入っていましたよね。キムジャン風習が「キムジャン文化」としてユネスコの無形文化遺産に登録されたのです。
韓国政府は、同年3月、ユネスコに「キムチとキムジャン文化」を無形文化遺産に登録するよう申請していました。それを受けユネスコは「キムジャン文化」のみを登録したんですね。まぁここでなぜ一方しか登録されなかったかというと、「キムチが登録されれば商業的に利用される可能性があるため」とのことらしいです。
キムチのほうが登録はされなかったにしろ、キムジャン風習の薄まりが強くなりつつある韓国にとって、このニュースは大変喜ばしいものではないのかと私は思いますよ。
今回の登録を受け、今までは興味を持たなかった若者も、キムチを自分たちで漬けてみようといった考え方も起きるかもしれませんし、学校や家庭でも文化継承の機会がもたれるかもしれませんね。
実際、首都ソウルでは3000人もの人々が集まり、6万個をも超える白菜をカットし、漬けこむといったイベントも起きています。その時出来上がったキムチは約250トン!
これらの動きがこれからも加速していってほしい。そうすれば、自国の文化は自分達で継承していこうじゃないか!といった気運も高まるかもしれませんよね。
そして、そういった動きが高まった場合、それをサポートしなくてはならない先輩が必要でしょう。
それは誰なのかというと、すでにキムジャン風習を体現している、おばぁちゃん達ですね。キムジャン風習の立派な先輩達ですよ。
さらにはキムチを自分たちで漬けることの楽しさや大切さ。韓国キムチそのものの栄養や、体への効能などについても広めていくことも必要になるでしょう。このあたりは社会教育事業や、メディア、SNSなどが一役買ってほしいところ。
以上、韓国のキムチについて長々と語らせていただきました。
これからも韓国キムチの行方が気になりますね。私、これからも本場の美味しいキムチ、食べたいです。